特集 母子保健
論叢
最近の大都市における自然死産率の上昇
佐道 正彦
1
1大阪大学医学部衛生学教室
pp.104-107
発行日 1966年2月15日
Published Date 1966/2/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1401203200
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はじめに
わが国における最近の統計を見ると,乳児死亡率の低下はきわめて著しく,戦後急激に上昇した全死産率も,ここ数年表停滞の傾向を示した。その中で自然死産率のみは,上昇を続けたまま依然として低下の徴を示さない。しかもこの傾向は大阪府,東京都など,乳児死亡率の低い大部会で特に著しくなっている。
乳児死亡率,とくに新生児死亡率と死産率の拮抗現象については,丸山が古く(1940年以前)から指摘し,Perinatal Deathの考察に注意を払うべきだと強調してきた。そうした観点より,最近10年の国民生活の実情から乳児死亡率の低下と死産率の上昇との関係を注意深く考察してみる必要を感じ,第17回日本人口学会に,われわれは「最近の自然死産率の上昇は妊娠7カ月以前のものによっている事から,妊婦の日常生活が胎児にとって,以前より安全性が低下してきたのではないか,いいかえると,妊婦の生活条件は,決して好ましい衛生状態にないばかりか,悪化しつつあるのではないか。」という事を指摘した。この時,統計上の問題について水島治夫博士より「人工死産を自然死産として届け出ることが多くなったから自然死産率が高くなったのではないか。」という主旨の疑問が出された。この発言は「死産の届け出が励行されだしたからではないか。」という発言と共通してかなり一般的に疑問視されているところである。
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