講座
クレーデ氏法の知識
初田 博司
1
1日本醫科大學
pp.33-36
発行日 1952年5月1日
Published Date 1952/5/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200104
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母體産道よりの淋菌感染によつて起る新産兒膿漏眼の豫防を目的として,胎兒分娩後直ちに1〜2%の硝酸銀液を結膜嚢内に滴下する處置を,クレーデ氏法と稱し,助産婦諸姉は勿論一般分娩介助者は必ず實施すべきものとされているので,これを知らない人はない程良く普及されて來ている。然し實際に當つてどんな所に注意すべきかについては充分に知つて置く必要があるし,それに基いた完全な處置を期待したいものである。
クレーデが1882年發表した當時の原法は,新鮮な2%硝酸銀液を硝子棒の先端につけて外眥部に觸れさしめ,藥液が自然に瞼裂から結膜嚢内に行きわたる樣にするのであつた。然るに實際は硝酸銀液を點眼瓶によつて多量に點眼される場合があるので,往女新産兒角膜に硝酸銀腐蝕による角膜溷濁を生ずることが多い。1%硝酸銀を點眼する場合でも多量であるか,又は液が製劑後時日を相當經たものであると濃度が不定となり,且つ多量の硝酸銀が直接角膜に作用して腐蝕を起し易い。腐蝕は表層のみでなく屡々角膜實質に及ぶ瀰蔓性溷濁で灰白色を呈し,多くは自然治癒に赴くが時に永久的白斑を賠して視力を害するものがある。從つて新鮮な溶液を1滴用いる樣にする注意が先ず必要である。
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