私の経驗
クレーデ氏法の代用として30%アセトスルファミン溶液の點眼を提唱す
野村 穆
pp.125-126
発行日 1950年3月15日
Published Date 1950/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1410200550
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初生兒淋菌性結膜炎即ち初生兒淋菌性膿漏眼(初淋結)が角膜軟化症と共に,幼年時失明の最大原因たることは疾くに周知の事実である.此の初淋の予防を目的として1681年クレーデ氏法(ク氏法) Dredé's methodが發桃されてから以來は,初淋結に因る幼小者の失明が激滅したと云われる.
然し乍ら此のク氏法に於て殺結の目的を以て使用される所の2%硝酸銀水は,点眼後屡々結膜に藥品性刺戟なる出血或は炎症を遺し,甚しきは角膜の溷濁,潰瘍をも生起させることがあるので,現今では1乃至0.5%硝酸銀水が代用されることが多い.が此の1〜0.5%の硝酸銀水でさえも其の好ましからざる副作用の爲めであるのか,私が近頃経驗した初淋結の数例ではク氏法が助産婦によつて任意に省略されているのは注目す可き事実である.此は多小,産道の汚染の程度により独断的に処理されるものと想像するのであるが,吾が眼科領域に於ても,比較的分泌物の小い.而かも淋結を確実に証明し得る所の,所謂不完全型の初淋結が実存することは明らかであつて,此と相似のものが産婦人科的にも在るものと思われる.斯樣な軽症の初淋結が臨床倉皇の間に於て,菌檢索を怠り油断し易い爲めに却つて危險を伴うことが多い.殊に人工栄養兒,早産兒或は虚弱兒等に於ては,角膜の崩壊,穿孔が速かであるので特に細心の注意を要するものである.
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