社会と助産婦
助産婦はどうすれば今の苦境から救われるか
石垣 純二
pp.7-9
発行日 1952年1月1日
Published Date 1952/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200004
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食つて行けない助産婦
市助産婦會長は立ち上つて,こう言つた。「私たちは食つて行けないのです。會員たちは内職を世話してくれといゝます。こんな籠編みを周旋したのですが,1日中根をつめて3,40圓にしきやならない」彼女は編みかけの籠をさし上げて見せた。「去年は年1人當り26件あつた出産が,今年は半減です。妊娠中絶と入院出産の挾みうちで,私たちはもうどうにもならないのですわ」と。私は會長の疲れた顔をながめながら感慨にふけつていた。今年の6月1日の朝日新聞の朝刊に書いた私の記事をあなたはお讀みにならなかつたのですか,このまゝでは助産婦は自滅あるのみだ。助産婦には今まさに最もふさわしい天職が目の前にある。助産婦でなければやれない仕事が,しかも日本の女性の幸福の絶對的條件の1つである仕事が目の前にころがつている。あなた方は何故立ち上つて堂々と,「これこそ私たちの天職だ」と主張しないのだろうか,私は焦燥と憤懣の入りまじつた妙な氣持で,會長の演説を聞いていた。
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