今月の言葉
助産婦は藝術家である
pp.5
発行日 1952年1月1日
Published Date 1952/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1611200002
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ザブルスキー氏の産科學教科書の開卷第1頁に「産科學とは妊婦及び胎兒を擁護するための藝術と科學である」と定義されている。さて産科學が妊産婦や胎兒,新生兒を守り育てるための「科學」であることは當然であるが,「藝術」であるとはどういう意味であろうか。この表現は一見奇異には思えるが,なかなか味わうべき言葉ではなかろうか。工場における製作品などは,科學的に設計された機械がつくりだすのであるから,誰が機械を操作しても,全く同じ製品が出來上つてくる。母から生れる子供もこれと全く同じ結果になるであろうか。事態は全然異ることはいうまでもない。生れる兒の心身の状態は,兩親の遺傳的素質にも關係するが,同時に妊娠中の攝生如何が,これに大きい影響をもつてくる。
妊婦に對する助産婦の指導如何が母體のみならず,生れる兒に對してもいかに大きい作用をもつていることであろうか。例えば妊婦の諸檢査を怠つて妊娠中毒症を見落し,そのために早産し,虚弱兒が生れたとか,或は妊娠初期の血液梅毒檢査をすゝめなかつたために,先天梅毒兒が生れたとすれば,これは助産婦の指導力の不足のためといえるであろう。
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