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はじめに
関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)診療のパラダイムシフトにより寛解が現実的な治療目標となった.それに伴い,RAのリハビリテーション医療の目標も,日常生活動作(activities of daily living:ADL)の改善・維持から,生活の質(quality of life:QOL)や患者満足度の向上へと変化してきた.近年の薬物療法の躍進により,厳密な疾患活動性のコントロール(treat to target:T2T)が可能となった今日,ほかのRA治療の4本柱である手術療法やリハビリテーションにも大きな変化をもたらした.手術療法は,薬物療法の進歩により構造的寛解が達成されるようになったことで,股関節や膝関節,肘関節など大関節の人工関節置換術の手術件数は減少しつつある1-3).しかし発症,診断から早期に寛解を達成した患者にとって,手指や足趾の変形は機能的問題に対する要望のほか,外見上の問題からも人工指関節や人工足関節,足趾関節温存の形成術などの手術件数は増加傾向にある3,4).また,股関節や膝関節の関節破壊に対する人工関節置換術は,関節リウマチ診療ガイドライン2020でも推奨されており5,6),構造的寛解を達成できなかった場合の有益な治療手段である.近年のRA患者に対する大関節への人工関節は,リウマチ性変化に加え,臨床的寛解達成後の変形性関節症(osteoarthritis:OA)が合併・進行した症例に対しても行われることが多くなってきた.そのような症例では,術後リハビリテーションにおいて良好な経過を示すことが多いが,術後活動量増加に伴い,隣接関節や末梢の小関節への誤用・過用による過負荷を考慮する必要がある7).また,RAの長期罹患・多関節罹患患者では,誤用・過用により隣接関節の機能障害が置換関節へ負担をかけることもあるため,術後の生活動作の評価・分析を行い,適切な指導が重要である.
そこで,本稿では,RA寛解達成時代の人工関節置換術後リハビリテーションについて,置換関節のみならず,他関節の影響を考慮した生活動作指導,術後長期的にQOLを維持するために必要な対応について述べる.
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