Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
森鷗外の『ヰタ・セクスアリス』—寄宿舎における性暴力被害
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.308
発行日 2024年3月10日
Published Date 2024/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203075
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明治42年に鷗外が発表した『ヰタ・セクスアリス』には,当時の学校の寄宿舎で行われた同性間での性的虐待の様子が描かれている.
この物語の主人公・金井君が入ったドイツ語を教える私立学校でのことである.金井君自身は父親の先輩にあたる東先生の家から学校に通っていたのだが,寄宿舎に住む先輩が帰りがけの金井君に寄宿舎へ寄って行けと言って,弾豆や焼芋をごちそうしてくれたり,親切めいた話をしてくれるようになったのである.そんな親切を金井君は嫌だと思ったものの,年長者に礼を欠いてはいけないとも思うため,忍んで交際していた.しかし,「そのうちに手を握る.頬ずりをする.うるさくてたまらない」.
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