Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「フジヤマコットントン」—「津久井やまゆり園事件・植松聖」へのアンサーとして
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.309
発行日 2024年3月10日
Published Date 2024/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203076
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本誌2022年9月号本欄で取り上げたドキュメンタリー「ひいくんのあるく町」(2017)を監督1作目とする青柳拓の2作目「東京自転車節」(2021)は,ウーバー配達員として東京を疾走するセルフドキュメントであった.ここで見えてきたものは,嘘と欺瞞に溢れ,何かあったら自己責任,人とつながることの困難,自身の存在価値への疑義と絶望に苛まれる世の中であった.これをいかにしてひっくり返そうかと思案したときに立ち上がってきたのが,幼少期に母に連れられて遊びに行っていた障害福祉サービス事業所「みらいファーム」の人々.青柳3作目「フジヤマコットントン」(2023)の被写体である.
2016年に起きた津久井やまゆり園事件を制作のきっかけとする本作は,「障害者は生きる価値がない」とする植松聖死刑囚へのアンサー.それを,理屈や言葉ではなく,自身の観たもの,感じたもので構成されるドキュメンタリー映画という表現で伝えようとしたのだ.
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