Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「こころの通訳者たち What a Wonderful World」—聴覚障害と視覚障害のコミュニケーション文化をぶつける挑戦
二通 諭
1,2
1札幌学院大学
2札幌大谷大学
pp.89
発行日 2024年1月10日
Published Date 2024/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203029
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東京都北区の田端駅下仲通り商店街に,座席数20の小さな映画館シネマ・チュプキ・タバタがある.日本で唯一のユニバーサルシアターであり,すべての映画をイヤホン音声ガイドと日本語字幕をつけて上映している.車椅子スペースや親子鑑賞室も備えている.筆者は,同館の存在をドキュメンタリー「こころの通訳者たち What a Wonderful World」(監督/山田礼於)によって知った.同館が放った“ユニバーサル”を究めようとした作品だ.
本作が描いたのは,視覚障害者に「手話」という聴覚障害者の“目で見る言語”の世界を伝えるという難題への挑戦.これに先立つ発想の種は,聴覚障害者に演劇を楽しんでもらうことを目的として舞台に立った3人の舞台手話通訳者たちの映像記録「ようこそ舞台手話通訳の世界へ」である.舞台手話通訳とは,役者のセリフや感情を伝える同時通訳のことである.通常の手話通訳とは異なり,通訳者も出演者の一人として演出家の指導のもと,役の衣装を着て舞台に立つ.本作の真骨頂は,前掲映像記録における舞台手話通訳者たちの手話の世界を視覚障害者に伝える点にあるが,となれば,1本の映画に4つのコミュニケーションツールが交錯することになる.
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