Japanese
English
特集 職業病とリハビリテーション
専任手話通訳者の頸肩腕障害
Cervicobrachial Disorder among Sign Language Interpreters.
垰田 和史
1
Kazushi Taoda
1
1滋賀医科大学予防医学講座
1Department of Preventive Medicine, Shiga University of Medical Science
キーワード:
手話
,
手話通訳
,
頸肩腕障害
Keyword:
手話
,
手話通訳
,
頸肩腕障害
pp.385-388
発行日 1992年5月10日
Published Date 1992/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552107070
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はじめに
我が国にはおおよそ35万人の聴覚障害者が生活しており,その中でも手話をコミニュケーション手段としている聴覚障害者が15万人程度いるといわれている.こうした聴覚障害者にとって手話は便宜的な意志伝達の手段ではなく,聴覚障害者の生活や文化に根ざした言語であるため,障害者相互だけではなく,健聴者との意志疎通にも重要な役割を果たしている.
我が国での手話通訳の歴史は,戦後,聴覚障害者の要請を受けて健聴者が手話サークルをつくったことに始まる.聴覚障害者のコミュニケーションを保障し,社会生活を支持するための行政施策としては1970年に「手話奉仕員養成事業」,1973年に「手話通訳設置事業」,1976年に「手話奉仕員派遣事業」を実施してはきたが,これらはいずれも民間のボランティア活動を基礎とするものであった.
しかし,聴覚障害者の社会参加が国際障害者年などの取り組みなどを通じて広がるに伴い,通訳者が必要とされる場面は行政機関,学校,職場,医療や就職など,障害者の人権や生命に直接関わりを持つ生活場面に広がり,通訳者の増員や質の高い通訳が求められるようになった.こうして近年は,手話通訳を職業とする専任手話通訳者が障害者団体や自治体などに配置され始めている.しかし,その数は手話通訳需要に対してまだきわめて少ないため,通訳者は過労に陥りやすくなる.
その結果,最近は専任手話通訳者の間に,手話通訳業務が原因で発生した頸肩腕障害が多発している.我々は,この新しい職業に発症した頸肩腕障害を予防するために労働負担調査や疫学調査を行い,発症のメカニズムの検討を行っている.本稿ではその概要を紹介する.
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