Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ヒラリー・スパーリングの『マティス 知られざる生涯』
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.88
発行日 2024年1月10日
Published Date 2024/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552203028
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2009年にヒラリー・スパーリングが発表した『マティス 知られざる生涯』(野中邦子訳,白水社)は,20世紀絵画の巨匠として時にピカソと並び称されるアンリ・マティス(1869〜1954)の評伝であるが,そこにはマティスが20歳の時の病気を期に画家を志すようになった経緯が記されている.
マティスは北フランスの生まれ.雑貨店の長男として育った彼は,「夢見がちで,おとなしく,従順な子供だったが,怠け者で,ぬきんでて頭がよいわけではなかった」.もともと腺病質だったうえに,次男を早く亡くしたせいで母親は長男の彼を大事にし,マティスもできるかぎり母を喜ばせようと努めたが,マティスによれば彼の「色彩感覚は母親譲り」のものだったという.
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