特別論文 精神医学の基本問題—精神病と神経症の構造論の展望
第10章 ヤスパースの「病像合成論」
内村 祐之
1,2
1東京大学
2財団法人神経研究所
pp.314-322
発行日 1971年4月15日
Published Date 1971/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1405201727
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精神病構造論のこれまでの展望の概観
私はこれまで数章にわたり,精神障害の発生と構造とについて,近代の主な研究者の意見を紹介してきた。そして,狭義の精神病のそれは,主としてクレペリンの疾患単位論を中心として展開されたものだが,問題の真の解明までには,まだ,おびただしい迂余曲折が残されているとの印象を強くしたのである。
ところで,以上述べたさまざまな意見や議論のうち,著明なものの1つとして,カール・クライスト独特の脳局在論へのヤスパースの批判と,それに対するクライストの反撃があったことは,第8章の終段で紹介した通りである。それゆえ,次にはヤスパース自身の意見を紹介するのが順序であったが,私は敢えてそこに第9章をはさみ,その中で,クライストの分裂病原因論に賛意を抱いていたオイゲン・ブロイラーと,ブロイラーに関連してアドルフ・マイヤーを取り上げ,この2人の思想を紹介したのであった。
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