Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
ドラクロアの『芸術論』—ロマン派と障害
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.1024
発行日 2023年9月10日
Published Date 2023/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202936
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ドラクロア(1798〜1863)は19世紀のフランス・ロマン派を代表する画家だが,彼の『芸術論』(植村鷹千代訳,創元社)に収められている『バイロン卿』では,イギリス・ロマン派を代表する詩人バイロン(1788〜1824)の身体障害が創造性に及ぼした影響が論じられている.
この中でドラクロアは,バイロンが異母姉との醜聞などもあって1816年に英国を去らねばならなくなった時の苛酷な状況を,「バイロン卿は,幾月ならずの間に,全く劇的なあらゆる苦難を舐めた」,「彼の住居は警察官によって度々臨検を受けたが,彼が貴族であるという特権のために,牢獄に送られることだけは,逃げることができた.しかし今度は,社交界から見放され,爪弾きされ,社会と激しい輿論の反抗とに追われて逃げたのである」と説明している.
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