連載 スポーツ用義足の最新事情・第3回
ダンス用義足
出口 雄介
1
Yusuke Deguchi
1
1公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター
1TETSUDO KOUSAIKAI FOUNDATION Prosthetics and Orthotics Support Center
キーワード:
パラリンピック
,
ダンス
,
パフォーマンス
Keyword:
パラリンピック
,
ダンス
,
パフォーマンス
pp.885-890
発行日 2023年8月10日
Published Date 2023/8/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202905
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はじめに
東京2020パラリンピック大会は新型コロナウイルス感染症の影響で史上初めて開催が延期され,さまざまな制約のなか行われた.そんななかにあって162の国・地域などから過去最多の4,403名もの選手が参加し,個々の限界に挑戦していった結果生まれた数々のレガシーは,世界中の人々の記憶に深く刻まれたであろう.
大会コンセプトの1つであった“多様性と調和”という理念は,人種や性別,言語,宗教,障害の有無などの違いを互いに認め合い,多様な考えを生かしながら社会を前へと進める考え方とされる.自分は他人と違う部分があったとしても,すべてを受け入れ,自己開示し,前向きに生きている人からは,居心地の良いポジティブな佇まいが感じられるものである.
筆者の在籍する益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター(以下,義肢装具SC)は,義肢装具の製作から義肢装着訓練に至るまで,一貫したサービスを提供する総合的なリハビリテーション施設である.日常用の義肢装具の提供を基本とするほか,スポーツ用義足の支援や,社会貢献を目的とした研究開発,さまざまな用途・目的に沿った特殊な義肢装具製作の相談など,幅広く対応している.本稿では,筆者が今までに制作してきた義肢装具のなかでも特に独創的な考え方,今までにないアプローチを必要とし,利用者と二人三脚で作り上げていく理想の最たる例として,ダンス用義足について報告する.義足を用いたダンサーは非常に少なく,専用の義足部品や定型的な製作方法はおそらく存在しない.それゆえに,あくまで筆者の経験している症例であることをあらかじめ認識しておいていただきたい.
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