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特集 障害・疾患を認識する
心の中の身体—運動機能障害を克服するための身体認知メカニズム
Body in mind: mechanisms of embodied cognition to overcome motor dysfunction
松宮 一道
1
Kazumichi Matsumiya
1
1東北大学大学院情報科学研究科
1Graduate School of Information Sciences, Tohoku University
キーワード:
心の中の身体
,
運動制御
,
身体所有感
,
運動主体感
,
複数身体表現
Keyword:
心の中の身体
,
運動制御
,
身体所有感
,
運動主体感
,
複数身体表現
pp.7-15
発行日 2023年1月10日
Published Date 2023/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202717
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はじめに
現状のリハビリテーションの方略では,治療的介入により身体の運動機能が向上しても,その向上効果が持続しないことが多い.身体の運動機能に障害を有する患者は,運動能力が単に低下しているだけでなく,心の中で感じている自分の身体にも異常が生じている.そのため,この「心の中の身体」の異常をいかに修正するかが持続的な運動機能回復の実現の鍵であると考えられている1).実際に,手や足の運動能力に障害がなくても「心の中の身体」に異常が生じれば,運動機能障害が起きると考えられる.これは,自分の身体に対して意識的に体験される身体が適正な状態になっていないと深刻な運動機能障害を引き起こすことを意味する.
運動機能障害を克服するには,「心の中の身体」を形成する身体認知メカニズムを理解する必要がある.患者が訴える「心の中の身体」の異常は患者の意識的体験であるため,その病態は目に見えず,適正な状態への誘導が困難であるという問題がある.患者の「心の中の身体」を適正な状態に誘導するには,その認知メカニズムの理解が必要不可欠である.
本稿では,① 「心の中の身体」をどのように操作するのか2,3),② 「心の中の身体」のどのような側面が身体の運動機能にかかわるのか4),③ 「心の中の身体」を身体位置感覚に基づいて可視化するとどのように表現されるのか5)を概説する.そして,これらの身体認知メカニズムに基づいて,運動機能障害を克服するための支援方法について検討する.
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