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原発性進行性失語の概念
原発性進行性失語(primary progressive aphasia:PPA)の概念はMesulam1)の提起から一般的に広く知られるようになった.これは,アルツハイマー病(Alzheimer's disease:AD)などの近時記憶障害を主症候とする変性疾患と区別され,言語症状のみが選択的に,他の認知症の症状より先行して進行する臨床症候群である.2011年にはGorno-Tempiniら2)によってPPAの診断基準が提起された.本診断基準では,PPAのタイプは3つの亜型に分類されている.非流暢/失文法型PPA(non-fluent variant PPA:nfv PPAあるいはnonfluent/agrammatic variant PPA:naPPA),意味型PPA(semantic variant PPA:svPPA),語減少型PPA(logopenic variant PPA:lpvPPA)である.
一方,PPAの概念とは別に,認知症性の変性疾患に関して,ADとは異なる一群を,マンチェスターの研究グループは前頭葉型認知症(dementia of frontal lobe)3),ルンド大学のグループは非アルツハイマー型前頭葉変性症(frontal lobe degeneration of non-Alzheimer type)4)と称して,報告した.後に,両グループは共同で,画像所見および臨床症候から前頭側頭型認知症(fronto-temporal dementia:FTD)という概念を提唱した5).その後,マンチェスターの研究グループが,FTDに失語症が前景に立つ意味性認知症(semantic dementia:SD)と進行性非流暢性失語(progressive non-fluent aphasia:PNFA)の2つのタイプを加え,fronto-temporal lobar degeneration(FTLD)と総称した6,7).これらの経緯から,変性疾患において,失語症候が前景に立つ一群が,PPAおよび,FTLDの亜型の中に位置づけられたと言える.ここで,PPAにおけるⅰ)nfvPPA/naPPAはFTLDにおけるa.PNFAに,PPAにおけるⅱ)svPPAはFTLDにおけるb.SDと対応する(図1).また,FTLDの概念は,病理所見まで含めた包括的な分類であるとの見解から,臨床類型としての分類が,提唱され,用いられるようになった8).この分類では,FTDという括りの中に,3型,すなわち,a'nfvPPA(naPPA),b'svPPA,c'behavioral variant fronto-temporal dementia(bvFTD)が含まれている.図1のABCの関係はⅰ)=a=a´,ⅱ)=b=b´,c=c´である.ここで,図1Cにおける前頭側頭型認知症の略語である‘FTD’は,図1Bにおけるc.FTDと同じ略語であるので注意が必要である.
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