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はじめに
電磁波とは,電場と磁場とが直行しながら空間を流れる波であり,さまざまな周波数帯域を規定している.電磁波は電離放射線と非電離放射線とに分けられ,電離放射線はエネルギーが大きくX線やγ線などのように組織の分子を電離や励起する特徴があり,突然変異や発がんなどの生態作用を及ぼすことがある.非電離放射線は可視光線や赤外線,極超短波,超短波,短波,長波,極低周波などに分けられ,周波数の高いものを高周波電磁波,低いものを低周波電磁波と呼ぶ(図1).それらの伝搬速度は周波数に関係なく光速(約3.0×108m/s)である.
物理療法における高周波療法は,超短波療法,極超短波療法,赤外線療法,紫外線療法,レーザー療法などがある.それぞれの物理刺激や治療目的,治療方法は異なるものの身体深部への効果を目的とした治療が多い.
本稿では,超短波療法と極超短波療法について,機器からの物理刺激の発生原理と生理学的効果,治療の目的,方法,適応と禁忌,リスク管理などについて概説する.
高周波電磁波はわれわれの生活において切り離せない重要な役割を果たしている.例えば光通信システムや各種レーダー,携帯電話,Wi-Fi,bluetoothなど重要な通信手段として用いられている.一方,物理療法として用いる高周波電磁波は,国内の極超短波療法(マイクロ波療法):2,450MHzと超短波療法:27.12MHzとがあり,生体の深部温熱を主たる目的とした治療法である.これらの電磁波は非電離放射線でありX線やγ線のように組織の分子を電離するようなエネルギーは有していない.極超短波とは周波数300〜3000MHzの帯域であり,極超短波治療で用いる2,450MHz(波長12.25cm)は家庭用の電子レンジでも用いられている.また,超短波は周波数30〜300MHzの帯域であり,超短波療法で用いる27.12MHzの電磁波は厳密には短波領域である.電磁波を通信以外の産業・科学・医療に用いるために国際的に指定されているIndustrial Scientific and Medical(ISM)バンドが用意されており,超短波療法では27.12MHzを用いている.
電磁波は放射と呼ばれる方法でアプリケーターから出力される.電磁波が生体に放射されるとその特徴から反射・屈折・吸収される.
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