書評
藤井克徳,星川安之 著「障害者とともに働く」
朝日 雅也
1
1埼玉県立大学保健医療福祉学部
pp.670
発行日 2021年7月10日
Published Date 2021/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202266
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本書のカテゴリー「ジュニア新書」の「ジュニア」の部分はいったん棚上げしておく.端的に言うと,障害のある人が働くことについて,その意義,歴史,実践的取り組み,そして課題に至るまで,誰もがわかりやすく,かつコンパクトに紹介する稀有な存在だ.
障害者が働くことへの関心が高まっている.障害者雇用率制度により企業や公的機関における障害者雇用が進められ,同時に福祉的就労と言われる障害者就労継続支援事業B型等に代表される働き方についてもさまざまな改善が図られている.一方で,障害者はなお,労働か福祉かの二者択一を迫る世界に留まっている.働くことは障害の有無にかかわらず人の営みにおいて重要である.日本も批准している国連の障害者権利条約は,障害者が働くことを権利として位置付け,各国政府に必要な施策の実施を求めている.この理念を実現するためには,どのような取り組みが必要なのか.本書は,障害に対する社会全体の正しい理解を基盤に,障害のある人が働くことの意義とめざすべき方向性とそのための具体的手段について考えさせてくれる.例えば,優生思想の克服,すべての人々に提供されるべきディーセント・ワークの追求,地域生活への移行を支える働くことの意味づけなど,障害者とともに働く社会を切り拓く鍵を端的に示す.
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