いい本見つけた!
—藤井輝明編著—「顔とトラウマ」
飯田 加奈恵
1
1杏林大学保健学部
pp.874-876
発行日 2001年9月1日
Published Date 2001/9/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906059
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わかっていますか,あなた.
「どこから来たのですか」
ハンセン病の元患者が国を相手に起こした裁判は,多くの人たちの喝采のなかで原告の勝訴とハンセン病補償措置法案の成立をもたらした.熊本地方裁判所での判決に前後してマスメディアがこの問題をとりあげ,テレビや報道のカメラの前に立つ原告を目にした多くの人たちは,ハンセン病がどのような病気で,隔離政策がどのようなものであったかは知らなくても,その姿から患者の苦悩の歴史の一端を垣間見る思いがしたに違いない.彼らの勝訴の会見をテレビでみながら,私は30年以上も前に看護学生として訪れたハンセン病の療養所での出来事を思い出していた.
何を目的とする訪問だったのかは忘れてしまったが,当時でもそこだけ場違いなほど深閑とした木立につつまれた一角に木造の病舎や生活舎があった.建物の内と外で行き交う患者さんたちにどのように相対したらよいのか….変形した四肢や顔貌をみつめないようにしなければ,自然をよそおわなければ,と気負うあまり,ぎこちなくなっていた私を救ってくれたのは,包帯交換を待つ入所者の「どこから来たのですか」という問いかけであった.
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