Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「瞽女GOZE」—最後の瞽女・小林ハルから今を生きる者たちへのメッセージ
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.511
発行日 2021年5月10日
Published Date 2021/5/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202229
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105歳まで生きた最後の瞽女・小林ハル(1900〜2005)の苦難と自己形成の軌跡を描いた「瞽女GOZE」(監督/瀧澤正治)は,視覚障害児童・女性にフォーカスした障害者史,民俗芸能史などの問題関心と共振する.瞽女とは,三味線を奏でながら語り物などを唄い,各地を門付けして歩く盲目の女旅芸人のこと.恥ずかしいことに,筆者は,大学で特別支援教育の教員養成を担う身でありながら小林ハルの存在を知らなかった.
本作は,尺数の6割が児童期ゆえ,優れた児童映画としての光彩も放つ.ハルは,生後3か月で失明.2歳で父と死別.ハルの将来を瞽女と定めた母は,その条件としての身辺自立の確立をめざし,躾の鬼になることを決意する.6歳のハルに,早朝の起床,挨拶,食事,立ち振る舞いの作法,針の糸通しや裁縫などを厳しく教え込む.その甲斐あってハルは,視覚の代わりに唇や舌など全身の感覚を駆使する術を体得.「弱音を吐くな」,「身体すべてが目」という母の言葉が,その後のハルの支えになった.
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