FORUM 世界の食生活・Vol.11
生を支えるハル イッケウ(食の背骨)
-――日本の先住民族アイヌの食生活
北原 モコットゥナシ
1
1北海道大学アイヌ・先住民研究センター
pp.535-539
発行日 2024年2月10日
Published Date 2024/2/10
DOI https://doi.org/10.32118/ayu28806535
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「札幌でアイヌ料理を食べられる場所はありますか.」旅行者や学生から,しばしば受ける質問である.ここで期待される “アイヌ料理” とは,アイヌ語名のついた料理といってもよい.近年では,札幌市内でもオハウ(汁物)やラタシケプ(和え物),チタタプ(生の魚/肉のたたき)といったメニューを提供する店がいくつかみられる.これらアイヌ語を冠するメニューのうち,筆者の勤務地がある札幌市北区北8条西6丁目付近からみて,もっとも近場で食べられるのは “シケレベカレー” である.シケレベとは,柑橘類に属すキハダの木の実のことで,漢方や日本の民間薬ではキハダの樹皮を用いてきたが,樺太や北海道のアイヌ民族は樹皮のほか,果実を料理や酒に用いてきた.シケレベカレーは,この実が持つ独特の風味を味わうことができるメニューなのだ(図1,2).
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