Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「カムイチェプ サケ漁と先住権」—友よ,夜明けは近い
二通 諭
1
1札幌学院大学
pp.417
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202207
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ドキュメンタリー作品「カムイチェプ サケ漁と先住権」(監督/藤野知明)は,1941年生まれのアイヌの漁師・畠山敏(紋別アイヌ協会会長)が,己の身一つで権力と渡り合う記録.その潔い佇まいには憧憬の念を禁じ得ない.また,アイヌが先住権を主張することの正当性を,歴史,国際条約,国際動向などから解き明かす.ただし,現行法を楯に畠山の動きを封じようする自治体職員,警察官らは,ごく普通の善良なる和人(アイヌ以外の日本人)ゆえ,鑑賞者は「原罪」(和人ゆえに背負っている罪)に気づき,心が痛むこと必定.
紋別アイヌ協会は,毎年,モベツ川を遡上するサケを迎える儀式「カムイチェプノミ」を行っている.その際,川で捕獲したサケを供物とする.川でのサケ・マスの捕獲は,水産資源保護法,北海道内水面漁業調整規則により,増殖と調査を除いて原則禁止だが,道知事は,文化継承を目的とする川でのサケの採捕を許可している.とはいえ,畠山にすれば,これ自体が打破すべき「制度」.かくして,許可申請することなく川でのサケの捕獲という挙に出る.仮に警察に連行されるとしても,日本の後進性や,政府の国連と国内での二枚舌ぶりの証左となり,先住権回復への弾みになる.得るものはあるが,失うものはない.
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