Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
カレル・チャペックの『白い病』—疫病による世代間対立と社会的分断
高橋 正雄
1
1筑波大学
pp.416
発行日 2021年4月10日
Published Date 2021/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202206
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1937年にチェコの作家カレル・チャペックが発表した『白い病』(阿部賢一訳,岩波書店)には,チェン氏病という「これまでなかった,新しい病気」のパンデミックが描かれている.チェン氏病は既に500万人が亡くなり,1200万人が罹患しているとされているが,少なくともその3倍の数の人々が「レンズ豆ぐらいの大きさの大理石のような,感覚のない斑点ができているのを知らずに世界中を駆けずり回っている」と推測される病である.
チェン氏病は「未知の病原体が引き起こす感染症」で,わかっているのは「45歳,もしくは50歳以上の人間に限られている」ことと,最初の徴候が現われてから3〜5か月後に多くの患者が敗血症によって死に至るということで,患者はひどい悪臭を放ちながら少しずつ腐敗してゆく予後不良の疾患なのである.
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