Derm.2022
疫病今昔
野村 尚史
1
1京都大学大学院医学研究科難病創薬産学共同研究講座皮膚科
pp.170
発行日 2022年4月10日
Published Date 2022/4/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1412206682
- 有料閲覧
- 文献概要
藤原道長(西暦966〜1027年)が,998年から1021年まで断続的につけた日記は,御堂関白記と称される.この自筆本が,京都市右京区にある陽明文庫に現存する.自筆部分が少なからず含まれる巻物が,国内外の度重なる危機を乗り越え,一千年以上守り伝えられているという奇跡的事実に,驚きを禁じえない.
今に伝わる最も古い道長の自筆は,998年7月5日辛酉の記録で,「相撲の中止,仁王経の転読,大祓の実施」が記されている.当時,人々は疫病に悩まされていた.これらは,当時の朝廷にできた精一杯の疫病対策である.相撲の中止は理にかなっているが,結論に至るまで,侃侃諤諤の様相だったろう.
Copyright © 2022, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.