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特集 東日本大震災から10年
福島災害被災者への精神保健支援—エビデンスに基づく電話介入
Mental health care for affected people after Fukushima disaster: evidence-based telephonic intervention
桃井 真帆
1
,
前田 正治
1,2
Maho Momoi
1
,
Masaharu Maeda
1,2
1福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター
2福島県立医科大学医学部 災害こころの医学講座
1Radiation Medical Science Center for the Fukushima Health Management Survey
2Department of Disaster Psychiatry, Fukushima Medical University
キーワード:
東日本大震災
,
電話支援
,
アウトリーチ
,
メンタルヘルス
,
放射線災害
Keyword:
東日本大震災
,
電話支援
,
アウトリーチ
,
メンタルヘルス
,
放射線災害
pp.255-260
発行日 2021年3月10日
Published Date 2021/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552202176
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はじめに
東日本大震災は地震・津波と原子力発電所事故を併発した複合災害であり,福島県沿岸部を中心とした広域の県民生活に甚大な被害をもたらした.福島では最も多いときで約16万人の住民が避難を余儀なくされ,震災から10年を迎えようとしている現在においても,約3万人が県外避難を続けている.このように,被災者の避難生活が長期に及ぶことは,通常の自然災害ではあまり起こり得ないことだといわれている1).
長期にわたる避難生活は,被災住民に深刻な精神健康上の問題を引き起こしている.例えば,福島県の震災関連自殺は令和元年度だけで12名であり,他の被災県(岩手県3名,宮城県1名)と比較して突出している2).また,うつ病や心的外傷後ストレス障害(post traumatic stress disorder;PTSD),アルコール乱用などの慢性的な精神疾患が見られるほか,スティグマ(偏見)や差別などの心理社会的問題にも直面している1).
本稿では,発災後に被災者がたどる心理過程と原発災害の特徴について概説した後,福島県の県民を対象としたメンタルヘルスに関する大規模疫学調査と,併せて行われている電話支援の試みから見える被災者の10年を紹介する.
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