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はじめに
全国の65歳以上の高齢者を対象とした認知症人口の推定値は2012年で15.0%に達し,65歳以上の7人に1人が認知症を有しているとされ,2025年には5人に1人になると推計されている1).急速な高齢者人口の増加に伴い,認知症高齢者の人口も増加し続けており,医療・介護の現場では深刻な社会問題となっている.
このような実情のなか,「暴言・興奮・抑うつ・物盗られ妄想」などの認知症の行動・心理症候(behavioral and psychological symptoms of dementia;BPSD)の発生が,認知症高齢者自身やその介護者に多くの弊害をもたらしている.先行研究によれば,1事例において平均6種類近くのBPSDが存在し,BPSDが1種類しかない事例は,わずかに全体の8%のみであり,認知症高齢者のBPSDは複数の症状が重複して現れる実態を反映している報告もある2).また,BPSDは認知症の進行や死亡に影響を及ぼし3),家族の介護負担の原因となり4,5),早期の施設入所や入所日数を長期化させていることが指摘されている.
BPSDへの対応や治療法として,『認知症疾患診療ガイドライン2017』6)においては治療の第1選択は非薬物療法であるとしている.また,認知症に対する非薬物療法の効果を支持するエビデンスが高まっているとしており,非薬物療法の代表例として「レクリエーション療法,音楽療法,回想法,認知刺激」といったアプローチ方法を挙げている.
具体的なアプローチ方法だけでなく,介入時に個別的な形態で実施するか,集団形態で実施するかによってもさまざまなエビデンスが散見されている.
老人保健施設古都の森(以下,当施設)では主に集団形態での介入を中心に行っている.集団形態で行うことの効果や実際の取り組みを紹介しながら概説する.
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