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はじめに
発達障害の主要な疾患である自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder;ASD)と注意欠如多動症(attention deficit/hyperactivity disorder;ADHD)は,以前は児童,思春期の問題であると認識されていたが,近年では,成人期の当事者に対する治療の必要性が急速に深まりつつある.わが国では,ASDが先行してクローズアップされたが,有病率の高いADHDに対する支援の必要性も提唱されている.
ASDに対する治療において薬物療法は,中核的な症状に対しての有効な薬剤は開発されておらず,薬物療法は,精神症状のために生活機能が大きく障害されている時期に対症療法として用いられるにとどまり1)心理社会的治療が重要である.2013年に実施した成人発達障害支援のニーズ調査において,烏山病院に通院している成人ASD当事者(212名)から得られた回答からは,「対人関係の維持・構築(66.3%)」,「コミュニケーション技術の習得(64.7%)」において,当事者からの高いニーズが示され2),心理社会的支援の必要性が認められた.近年では,ASDに特化した治療的な取り組みを実施する機関が増え,さらに,2018年度より40歳未満の患者に対して精神科小規模ショートケアを実施した場合,疾患別等専門プログラム加算が認められるよう診療報酬が改定されたことは,さらに社会的なニードとして認知されてきたことの反映である.
ADHDについても,薬物療法が選択できるものの,あくまでも特性をコントロールして日常生活や仕事での支障を軽減するための一助となるものであり,投薬だけですべてを解決できるものではない.成人期のADHDに関するガイドラインでは構造化された実行スキルを高め,併存しやすい不安や抑うつに対処するための心理社会的治療を導入することで機能障害の改善を図ることが推奨されているが3),ADHDに対する心理社会的な治療は普及していない.
このようにASD,ADHDともに心理社会的治療の重要性,必要性の認識の高まりに合わせ,昭和大学附属烏山病院(以下,当院)では2008年よりASDを中心とした発達障害専門外来・デイケアを開設し,さらに2013年よりADHD専門外来の開設と同時にADHD専門集団プログラム(専門プログラム)を実施している.よって,本稿では,当院の臨床経験を紹介しながら,専門プログラムの概要とその効果,集団療法の意義,今後の課題について概説する.
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