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はじめに
水治療法・温泉療法の主体は水の特性を利用した物理療法である.物理療法にはそのほかにホットパックやパラフィン浴,電気,超音波,赤外線などの温熱療法が含まれる.リハビリテーション医学はこれらの物理療法とともに発達し,理念を共有してきた.
わが国の物理療法は温泉療法に端を発し,その歴史は神話や開湯伝説からとかなり古い.江戸時代には医学的な温泉研究者が現れ,貝原益軒(1630〜1714年)は『養生訓』に温泉について多くの知見を記載した.温泉は湯治という形で一般庶民にも親しまれるようになったが,明治時代に西洋医学が流入し湯治場としてのあり方は次第に忘れられ,観光や娯楽との結びつきが強くなった.1948年(昭和23年)に温泉法が制定され,「温泉とは地中から湧出する温水,鉱水および水蒸気,その他のガス(炭化水素を主成分とするガスを除く)で,含まれる物質として19種のうち1つ以上が定められた基準値を上回っているか,または水温が25℃以上」と定義された.2016年の環境省の統計によると,わが国には温泉地は3,155か所,温泉源泉総数は27,214か所,宿泊施設は13,108か所,公衆浴場は7,864か所あり,世界一の温泉天国である1).
近代医学の進歩において新規薬剤の開発に焦点が当てられるなか,温泉研究は衰退した時期もあったが,最近の健康志向や高齢化社会の進展とともに温泉療法は徐々に見直され始めている.温泉療法は伝統的治療法でエビデンスに乏しいと思われがちだが,多くの疾患でその多面的効果が明らかになっている.脳卒中や骨関節疾患,心肺機能低下など温泉療法の適応は広く,これらのリハビリテーションには非常に有効である.本稿ではその作用機序とリハビリテーション診療における応用を概説する.
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