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はじめに
障害の有無にかかわらず,就労達成とその維持は,青年期・成人期における重大な発達課題の一つである.発達障害者にとって,就労にかかわるさまざまな場面で起こるつまずきにより,障害特性に起因する就労上の困難さが明るみになる.その課題解決は,その後の自己実現や生活の質に直結する.発達障害者の多くは,就労上の困難さを契機に診断に至り,職業リハビリテーションや就労支援を希望する.このように就労支援機関は,発達障害者にとって身近な支援機関として注目されている.
現在,発達障害者の職業リハビリテーションや就労支援には,障害福祉や労働,教育,若年者支援,精神科医療など,さまざまな分野の支援者が,それぞれの立場でかかわっている.2016年8月,改正発達障害者支援法の施行により,発達障害者の就労支援ニーズはより注目されると思われるが,それぞれの分野における就労支援の実践を共有し,俯瞰する仕組みはない.また発達障害者が利用できるサービスはさまざまであるが,個々の特性や支援課題に合ったものを対象者が自ら選択するのは容易ではない.さらに,診断を受けているか,障害者手帳を所持しているか,障害情報の開示を希望しているかなど,本人の状態像によっても,活用できるサービスが異なる.どのような就労支援が受けられるのかは,本人が自らの課題に気づくタイミング,特別な配慮や支援を受け入れるタイミングにも左右され,さらに最初に出会う支援者に委ねられてしまうのが現状である.
本稿では,前述のような発達障害者を取り巻く職業リハビリテーションや就労支援の現状を踏まえ,① 想定される対象者層,② 職業リハビリテーションや就労支援の契機,③ 職業リハビリテーションプロセスの実際について,発達障害者の就労上の課題,主な支援機関の役割・機能,就労支援の実際と今後の課題といった3つの観点から概観する.
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