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はじめに
近年になり,自閉症,学習障害,注意欠陥多動性障害等の発達障害に関する研究が進展するにつれて,これらの障害のある人に対する理解が深まり,必要な支援の開発に力が注がれるようになった.こうしたなかで,2004年に発達障害者支援法が制定され,保健・医療,福祉,教育,職業等に関係する施策を担当する行政部局,支援機関,施設等が有機的な連携を図り,発達障害のある子どもや人々への支援を推進することになった.
従来,これら子どもや人々のなかで,知的障害を伴わない場合には「軽度発達障害」と言われ,施策や支援の対象から外されてきた.しかし,保育所や幼稚園のような幼児期における活動の場で,また小学校や中学校,さらには高等学校などにおける教育の場で適切な支援が受けられなかったために,いじめや2次的な障害によって活動が制限され,職業生活などの社会参加が制約される事例が少なくないことが関係者から指摘されるようになった.保健・医療,保育・療育,教育,労働等の領域における熱心な支援者,研究者,また保護者等の関係団体による昨今の活発な啓発活動によって,ようやく国や地方公共団体が動き出したと言える.
発達障害者支援法は,2002年12月に策定された現行の障害者基本計画,2004年に改正された障害者基本法に基づいて制定され,またこれらの施策を背景に2005年に「障害者の雇用の促進等に関する法律」(以下,障害者雇用促進法)が改正された.後述するように,この法律が適用される知的障害のある人の療育手帳や,精神障害のある人の精神保健手帳の交付を受けている発達障害のある人もいるが,そのどちらの手帳をも,もたない人についても,「長期にわたり職業生活に相当の制限を受け,または職業生活を営むことが著しく困難」であると認められた場合には,障害者雇用促進法における職業リハビリテーションの雇用支援施策の対象とされた.このことを踏まえて,企業等への就業(一般就労とも言う)の課題を中心に発達障害者の就労支援について述べる.
発達障害者支援法の制定以後,国の施策として共同研究によりマニュアルの作成が進められてきている.ここでは,筆者が座長として作成に係わった「発達障害のある人の雇用管理マニュアル」1),「発達障害のある人の職業訓練ハンドブック」2)などによりながら概説する.
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