Sweet Spot 映画に見るリハビリテーション
「ソロモンの偽証(前篇・事件 後篇・裁判)」—「いじめを許さない集団」を生徒主導で構築する
二通 諭
1
1札幌学院大学人文学部人間科学科
pp.77
発行日 2017年1月10日
Published Date 2017/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552200833
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教育学者の竹内常一は,子供たちのいじめ問題に寄せて,それを解決できるのは子供の自治の力であると述べている1).ここで実践テーマとして浮上してくるのが「学級集団づくり」だ.この実践の第1のポイントは「班づくり」.班は子供に危害やいじめや暴力を加えることを許すものではなく,その子を守るものであることが求められる.第2のポイントは「リーダーづくり」.リーダーは,友だちと相互応答的な関係性を結びながら,友だちがどのような生き方を願って行動しているかを学ぶことをとおして育つ.第3のポイントは「討議づくり」.これは,自分の不利益には黙っていないという異議申し立て,自己の意見表明権の行使から出発する.次に,自分の利益だけでなく,他者の利益を念頭に入れる,すなわち集団の利益,公共の利益を考慮するに至る.
もとより学校教育における実践内容は教科指導と生活指導に大別されるが,集団の教育力を組織する集団づくりは生活指導に位置づく.いじめ防止法施行(2013年9月)から3年を過ぎてなお,いじめ被害を受けた23人もの子供たちが自死の道を選び,いじめ認知件数も過去最多の22万件に達している.自然発生的かつ容易に形成されやすい「いじめ集団」を乗り越え,「いじめを許さない集団」をつくるところに生活指導実践の真骨頂があるが,果たしてどれほどの教師がこの課題に挑戦しているであろうか.
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