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近年,徐々にテレビなどの報道も増え,障がい者のスポーツも認識されてきた.さらに東京オリンピック・パラリンピックが2020年に決まり,パラリンピックについても少しずつ,日本の社会に浸透してきたように思われる.もともと障がい者のリハビリテーションの一環としてスポーツが勧められた.スポーツに参加することは,健常者と同じように,社会でのコミュニケーションの参加の場が広がるとともに,残存機能の維持向上や,生命の維持にも役立つことも多い.近頃ではパラリンピックのように,競技性が高くなり,競技としての障がい者のスポーツも質がますます高くなり,日本の選手も世界の中でメダルを獲得することが,厳しくなってきている.筆者は身近な障がい者の方々にスポーツを勧めることも多いが,元来スポーツなどしたことがない患者も多い.そんななか,その患者に興味がもて,継続してできそうで,体力などの維持にも役立ちそうな,障がいの種類や程度にあわせて可能なスポーツを選択し,勧めるようにしている.社会復帰の一つのきっかけとして,スポーツを始める患者もいる.主に病院でスポーツを勧める患者の障がいは,脊髄損傷や,頭部外傷,脳梗塞,四肢切断が多い.知的障害や,内部障害,視覚障害,聴覚障害の方々とは病院のリハビリテーション科として接することは少ない.スポーツとしてのリハビリテーションを勧めることで,社会参加としての精神面の安定に寄与するところも大きい.
ところで,東京オリンピック・パラリンピックが決まり,選手へのサポートも変化し,障害者スポーツにおいても,健常者と同じようなサポートが受けられるように少しずつなっている.今までサポートする側もリハビリテーションやレクリエーション的な要素が大きかったため,スタッフもボランティア的な面も大きかった.ところが,スポーツとして今まで厚生労働省の管轄であった障がい者のスポーツが,健常者と同じ文部科学省の管轄となり,サポート面の予算も変わった.その分,競技性がさらに要求され,商業ベースにも乗るようになった.いい面もあり,悪い面もあるかもしれない.サポートの面で,健常者にはない配慮が必要なこともある.交代浴やアイスバスなどを取り入れている競技も増えている.ただ,脳血管の障害や脊髄損傷など,まだまだ健常者と同じように効果が得られ,パフォーマンスの発揮に役立つかどうか心配な面もよくある.ある選手は血圧が上昇し,頭痛やめまいを訴え,ある選手は脳出血を生じたこともある.原因は明らかではないが,サポートをするうえでも十分な配慮と障がいに対しての理解が必要と考える.今後健常者と異なる適応に対するマニュアルや注意喚起づくりも必要になるだろう.リハビリテーションの一環としてのスポーツをすることはよいことであり,その一部に競技性の高い選手をつくることも,その選手の人生に大きな意味をもつことだと思う.選手の中には現在アスリートとして活躍しているが,時に,今後の長い人生での社会でのありかたに不安のある選手も少なくない.障がい者のスポーツはリハビリテーションとして,レクリエーションとしての意義をもつとともに,社会福祉や社会参加としての一面もある.そうした面に配慮した制度も一考してほしい.
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