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はじめに
脳卒中合同ガイドライン委員会が作成した脳卒中治療ガイドライン2009では,脳卒中維持期のリハビリテーションとして下肢の筋力増強やトレッドミルを使用した歩行訓練などが有効であるとされている1).一方,脳卒中の病理は脳の損傷による脳のシステムの破綻で生じる運動機能の障害2)であるため,筋力の量的な増加や動作の反復のみで解決できない運動の質という問題が生じてくる.その問題とは,脳損傷による異常歩行ではどのような環境状態でも同じ運動方略であること,またそれを変化させることができないことである.それに比べて健常な人間では環境に応じて運動を自在に変化させ,それを学習することができる.
リハビリテーションによる運動療法の機能回復は,運動学習による効果である2).運動学習の1つである誤差学習では,運動した結果得られた体性感覚情報と運動指令より得られる遠心性コピーとの誤差を検出し運動プログラムの修正が行われる3).すなわち運動学習には体性感覚情報が必要であり,身体を運動するための効果器として捉えるだけでなく感覚情報を知覚する情報器官として機能することが求められる.このような身体の情報を基にして身体運動を改善させる治療が報告されている4-6).
今回,発症から5年以上経過した脳梗塞左片麻痺を呈した症例に対し,身体の変化を知覚して運動制御を学習(知覚運動学習)していく認知運動課題5)にて3か月の介入を行った.介入前は動作練習中心の運動療法を受けており,動作レベルは立ち上がりや移乗に介助を要する状態であった.しかし介入により立位の姿勢やバランスに改善がみられ,移乗の自立や平行棒内歩行が可能となったので報告する.
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