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はじめに
痙縮の治療の1つとしてボツリヌストキシンA療法(botulinum toxin A therapy;BTX-A)は,副作用が少なく,比較的安全かつ簡便に行えるため,近年注目されている.BTX-Aは1998年以降,海外主要国で脳性麻痺児(cerebral palsy;CP児)に対する有効性が示され1),日本でも2009年2月からCP児の下肢痙縮に伴う尖足へ適応を拡大承認されている.
CP児に対するBTX-Aの治療目標は痙縮の軽減にとどまらず,日常生活動作(activities of daily living;ADL),生活の質(quality of life;QOL)の実質的な改善である2)とされ重症度に応じBTX-A治療目標は異なる.CP児の粗大運動能力を示すGross Motor Function Classification System(GMFCS)で重症度を分類すると,GMFCS level Ⅴでは疼痛や呼吸機能の改善,level Ⅱ〜Ⅳでは歩行機能の改善を示した報告がある3-5).しかしGMFCS level Ⅰの歩行機能の改善を客観的に評価した報告は少なく,その効果に関しては十分に明らかにされていない.また6分間歩行での酸素摂取量と二酸化炭素生成量をポータブルガス分析器で測定した,エネルギーコストを用いてBTX-A前後の歩行評価をしたものでは,GMFCS level Ⅲのみ有効で,軽症例であるlevel Ⅰには変化がない可能性を示唆している報告もある6).
Level ⅠのCP児の特徴としては,静的な場面では明らかでない痙縮が動的な場面,特に歩行において出現するため,容易に転倒しやすく,長距離の歩行で疲労しやすいことが挙げられる.また年長児ではきれいに歩きたいとのHopeもあり,歩容,歩行機能の改善がlevel Ⅰの治療目標となる.
今回BTX-Aとリハビリテーションを併用し,BTX-A後1か月,3か月で歩容の改善が得られたGMFCS level Ⅰの痙直型両麻痺児の1例について報告する.効果判定としては静的な評価としてModified Ashworth Scale(MAS),関節可動域(range of motion;ROM)を用いた.動的な評価はGross Motor Function Measure(GMFM),歩容の評価としてFoot Contact Scale(FCS),3次元動作解析による歩行分析を用いて評価を行った.
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