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はじめに
統合失調症の治療の第一選択肢は薬物療法である.抗精神病薬が精神病症状を減らすことに疑いはない.しかしながら,精神病症状が残存する者は少なくなく1),副作用から中断してしまう者も多く2),なかには服薬を完全に拒否する者もいる.今後も神経科学の発展によってよりよい抗精神病薬の開発が望まれるにせよ,現段階で統合失調症を抱える者たちの転帰を改善するための最善の方法は,薬物療法と,それを補完するための心理社会的介入を組み合わせることである.統合失調症の心理社会的介入のなかでも,有望視されている方法の1つが認知行動療法(cognitive behavioral therapy for psychosis:CBTp)である.
統合失調症の認知行動療法については,症状の低減に効果があることは,これまで複数のメタ分析において繰り返し確認されてきた3-7).効果量のレベルは低〜中等度(0.3〜0.5程度)ではあるものの,これは補完的療法としては決して低いとはいえない.こうした効果検証を背景に,CBTpは,国際的な統合失調症の治療ガイドラインのなかでも繰り返し推奨されてきた8-10).例えば,英国のNational Institute for Health and Clinical Excellence(NICE)ガイドラインでは,「すべての統合失調症患者に対して,提供されるべき心理療法」であるとしている9).最近では,服薬をしない者に対するCBTpの効果も報告されており11),統合失調症患者に対する心理社会的介入において優先されるべき心理療法としての可能性はますます高まっている.
本稿では,CBTpについて,まず,見立て(事例定式化)のために必要な陽性症状の心理学的モデルを紹介し,治療のプロセス,そして,ほかの障害の認知行動療法との違いについて概説する.なお,念頭に置いている患者は,薬物抵抗性の陽性症状をもつ患者である.
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