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はじめに
私事ではあるが筆者は本年1月に長年お世話になった東北大学をあとにして東邦大学に赴任してきた.これまで東北大学病院で取り組んできた嚥下リハビリテーションを,東邦大学医療センター大森病院という同じく1,000床クラスの病院において行おうとしたところ唖然とした.なんとそこには言語聴覚士(ST)が1名しかいなかったのである.
東邦大学医療センター大森病院は,東北大学病院のように脳卒中は主に関連病院に割り振っているわけではなく,あらゆる疾患の周辺患者が救急外来に次々とやってきて治療していく,まさに地域に根差しながら,高度先進急性期医療を行って行く基幹病院である.したがって高齢者も多く,嚥下障害患者はおそらく東北大学病院以上に存在し,嚥下リハビリテーションを担うSTは東北大学以上に必要であろうと思われ,ST 1名という状況では嚥下に関しては悲惨な状況かと思われた.ところが実際に勤めだしてすぐ,チーム医療により嚥下に対するマネージメントが実に効率よくかつ的確に病院内で行われていることがわかり,非常に感心した次第であった.
東邦大学大森病院嚥下障害対策の基本理念は「入院患者の誤嚥・窒息事故を防止し,不必要な食止めを回避することであり,その達成にために嚥下障害の疑いのある患者に正確な嚥下評価とリハビリテーション・適切な食形態での経口摂取開始が行えること」である.その目的達成のために,① 嚥下評価必要患者の把握と嚥下評価Ⅰ・Ⅱ,簡易嚥下訓練の実施,② 各病棟嚥下係(リンクナース)と摂食嚥下看護認定看護師の連携,③ 各科入院嚥下外来受診方法・嚥下回診受診方法の把握.④ 摂食機能療法(嚥下訓練)の算定,⑤ 嚥下障害の退院支援,の5つの構成要素からなっており(表1),それが見事に機能している.同じように予算や人材不足などの理由でSTに困窮している病院も世に多いと思われ,東邦大学医療センター大森病院の嚥下に対する取り組みをその構成要素一つ一つ解説することにより紹介したい.
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