世界のナース・6 フランス
教養と優しさ
田付 たつ子
pp.32-36
発行日 1950年9月15日
Published Date 1950/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906708
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私自身一度も病院にいたことがありませんでしたので,個人的な經驗をお話することはできませんが,以下には,私が病院を訪れた時に見たり聞いたりしたところをお話しようと思います。
ラフンスでは,病院に入るということは,最も不安定な經濟状態を想像させるものなのです。時々貧乏な人達のことをこう言います。「あの人達は病院に行くより仕方がないでしよう」と。つまり,病院は,貧乏な人達にとつて一番最後の住居なのです。國立の大きな病院は無料ですが,その代り患者さん達は,時々實驗に使われます。お金持の人達のためには,私立病院があつて,これには,ホテルのような豪華なものや,もつと質素なものがありますが,大抵大變高價で,原則として,重くて急を要する手術や傳染病の場合でなければ,自宅で療養する方を人は好みます。この場合には,よく慈惠病院の看護婦さん(修道女)を頼みますが,彼女達がこうして看護に献身するのは,信仰によるものなのです。修道女の宗教的性格や,そのやさしさ,自己犠牲,靜寂さ等は,彼女がいることだけでもう病氣がよくなり初める位なのです。
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