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特集 脳科学の進歩―最近のトピックス
言語のモジュール仮説
The modular hypothesis of language:Current topics in brain science.
金野 竜太
1,2
,
酒井 邦嘉
1
Ryuta Kinno
1,2
,
Kuniyoshi L Sakai
1
1東京大学大学院総合文化研究科相関基礎科学系
2昭和大学横浜市北部病院内科(神経)
1Department of Basic Science, Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo
2Division of Neurology, Department of Internal Medicine, Showa University Northern Yokohama Hospital
キーワード:
言語
,
脳機能
Keyword:
言語
,
脳機能
pp.27-33
発行日 2014年1月10日
Published Date 2014/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110362
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はじめに
人間の言語処理過程は,いくつかの異なるレベルに分けられる.単語レベルの言語処理には音韻や語彙的意味処理があり,文および会話レベルの言語処理には統辞処理と文意味理解がある.したがって,これらの言語要素の処理が異なる脳領域で行われるのかどうか,すなわち,複数の言語野が存在するかどうかが重要な問題となる.
脳内の主要な言語野は19世紀に発見された.言語を話す機能の言語野(運動性言語野)はP. Broca(1824~1880)により左下前頭回後部に位置することが示され,言語を聞いて理解する機能の言語野(感覚性言語野)はC. Wernicke(1848~1905)により左側頭回後方に位置することが報告された.N. Geschwind(1926~1984)は,上述の2つの脳領域と両野を結ぶ弓状束の連合作用の重要性を指摘した.近年の脳機能イメージング研究の進歩により,これらの言語野の詳細な機能,さらには他の脳領域の言語処理への関与が報告されている.また,拡散テンソル画像などの神経線維を可視化する技術により,言語処理の神経ネットワークを解明する試みが進められている.本稿では,まず言語処理の脳内機構を概観し,続いて言語のネットワークおよびそのモジュール性に関する知見を紹介する.
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