Japanese
English
特集 脳科学の進歩―最近のトピックス
社会脳
Social brain:Current topics in brain science.
生方 志浦
1,2
,
村井 俊哉
1
Shiho Ubukata
1,2
,
Toshiya Murai
1
1京都大学大学院医学研究科脳病態生理学講座
2神戸大学大学院保健学研究科リハビリテーション科学領域
1Department of Psychiatry, Graduate School of Medicine, Kyoto University
2Department of Rehabilitation Science, Graduate School of Health Sciences, Kobe University
キーワード:
脳イメージング
,
情動
,
共感
,
心の理論
Keyword:
脳イメージング
,
情動
,
共感
,
心の理論
pp.35-40
発行日 2014年1月10日
Published Date 2014/1/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552110365
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社会脳とは
社会脳と呼ばれる脳内ネットワークやその機能障害が,最近,神経科学や神経心理学・精神医学の分野のみならず,リハビリテーション医学においても関心を集めている.社会脳とは,ヒトが同種の集団である社会あるいはその状況下で,適切に振る舞っていくために重要な役割を果たす特定の脳構造を指す.本稿では,社会脳の構成要素・および脳内機構について,最近の神経科学の知見を踏まえ紹介する.特に,そのような特定の脳構造に損傷を受けた結果,社会的認知・社会行動に障害がみられるようになった症例を紹介し,ヒトの社会性といった漠然とした能力に,脳がどのように関わるのかを考えてみたい.
社会脳についての考える際に,「社会脳仮説(social brain hypothesis)」という考えがある1).社会脳仮説とは,ヒトを含む霊長類の脳は,社会的な能力を獲得するためにどんどん大きくなってきたという仮説である.ヒトの脳は大脳新皮質が発達したことで,従来に比べ大きくなってきたと考えられている.霊長類のさまざまな種のあいだで,その集団の大きさと大脳新皮質を比較した場合に,両者(正確には全脳の大きさに対する比)に相関が認められることがDunbarの研究によって示されている2).このことから,集団が大きくなれば,求められる社会的能力も高くなり,結果として大脳新皮質が発達するのではないかと考えられる.
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