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世界とつながる
現在,筆者は大学に籍を置いているが,医学部を卒業して2年間大学で研修したあと,その後の20年間は地域の第一線で診療に従事しながら,複数施設でゼロからリハビリテーション科の立ち上げに奔走していた.忙しく臨床に没頭する毎日であったが,頭の片隅には,リハビリテーション医療を少しでもよくしたい,リハビリテーション医学を一歩でも前に進めたい,という思いがあった.そのために何ができるか,いろいろ考え,まずは目の前の患者様に少しでもプラスになることをしたいという思いで,日々の臨床のなかで生じた疑問をもとに臨床研究を計画・実施し,少しずつその成果を和文誌に発表していた.するとそれなりの反響があり,これまで接点がなかった国内の臨床家や研究者と交流がもてるようになった.
そのようななかである国立療養所に赴任し,Duchenne型筋ジストロフィーの方の診療に携わる機会を得た.手探りのなかで経験を積む毎日であったが,そのうちに最も基本的な病態である筋障害がどのように進行していくのかに関心をもつようになった.そこで,診療が一段落した夜に,CT室で放射線技師と相談しながら,CT画像のなかでどうしたら正常な筋を脂肪や変性した筋と分けて定量化できるかを考え,試行錯誤の末にあるアイデアを思いついた.早速,さまざまな障害度の症例を対象に筋障害の分布とその進行過程を定量的に評価し,障害度や筋力との関係を検討してみた.このような研究はほとんどなかったため学位として結実し,さらにこれを発展させた内容を初めて英文誌に投稿し,数回の修正の後,見事採択された1),論文掲載後,海外からも別刷の依頼や問い合せが相次ぎ,しばらくすると海外の放射線医学の教科書にも引用されるようになった.まさに臨床現場のニーズから始まった研究が,英文での発信を機に世界とつながることを実感した瞬間であった.それからは,研究成果を意識して英文で発表するようになったが,電子化が急速に進むなかで,ひとたび英文で発信されると瞬時に世界とつながり,PDFの依頼,論文に対する質問やコメント,Web会議の要請,共同研究の可能性の打診,研究室への留学希望などが寄せられ,さまざまな新しい展開が拓ける時代になっている.
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