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医師になって20年が過ぎ去った.あっという間だった気がする.この間,リハビリテーションの患者層は少しずつ様変わりした.研修医時代に多く経験した外傷性切断や脊髄損傷が減る一方で,脳卒中や発達障害が増えた.超高齢社会を迎え,嚥下障害や高次脳機能障害に対するニーズが増大し,がんや心臓リハビリテーションの需要が高まっている.今後,医学的リハビリテーションの必要性はますます高まるだろう.時代が移り変わっても,リハビリテーション医学は機能障害を改善・維持し,高いADL・QOLを目指すことを主眼としたユニークかつ普遍的な学問であり,その使命は不変である.
さて,リハビリテーション科医が最も得意とするものは何か? 専門性(アイデンティティ)とは何か? 全身を診るのが得意という人がいるが,リハビリテーション科医に限らず,小児科医,老年内科医,総合診療医も得意である.リハビリテーションマインドをもっていることだろうか? 他科にもリハビリテーションマインドを兼ね備えた医師は増えつつある.リハビリテーションマインド=アイデンティティとまでは言いにくいのではないか.私なら,リハビリテーション科医の最大の武器は,どの科の医師よりも最も障害を的確に把握し,正確に予後診断が行えること,その結果に基づいて適切なリハビリテーション技術を選択・提供すること,と即答する.最適なリハビリテーション技術を選択するためには,正確な病態把握に基づいた障害評価・予後診断が必要不可欠だ.日常診察でおおよその病態・障害は把握できるが,障害評価・予後予測の精度を上げるためには,さまざまな診断技術を駆使しなければならない.例えば,診察室で行える水飲みテストは嚥下障害のスクリーニングテストとして頻用されるが,不顕性誤嚥までは診断できない.それを補うために,嚥下造影検査(VF),嚥下内視鏡検査(VE)がある.VF,VEは不顕性誤嚥などの嚥下障害の診断精度を上げるのみならず,さまざまな食形態や姿勢で検査できるため,適切な訓練法を立案できるツールとしても活躍する.
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