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はじめに
体性感覚は,皮膚の受容器に由来する表在覚と,筋・腱・関節など皮下の受容器に由来する深部覚に大別される.神経学的には表在覚として痛覚,触覚,圧覚,温覚,冷覚,深部覚として関節位置覚,運動覚,振動覚がある.
関節位置覚や運動覚は自らの運動によって深部受容器が刺激されて起こる感覚で,固有感覚とも呼ばれる.一方,体性感覚は伝導路を上行するにしたがって統合され,特徴的な情報の抽出がなされる.複数の体性感覚の統合過程で起こる感覚を複合感覚と言い,皮膚の2点弁別,触覚定位,立体覚などがある.なお,複合感覚は皮質覚とも呼ばれ,厳密には表在覚や深部覚といった要素性の下位感覚が正常な場合において複合感覚障害の有無を論ずるべきである.
これらの体性感覚は運動・行動と密接に関連しており,リハビリテーションにおいては,体性感覚障害自体よりも,それに起因する運動・行動異常に焦点があてられることが多い.関節位置覚が障害されスムーズな運動ができなくなる感覚性運動失調症,全般的な体性感覚障害に多く見られる身体失認や幻肢15),あるいは高度の変形を生じるCharcot関節症などである.
一方,疼痛も運動・行動に大きな影響を及ぼす.疼痛は単に痛覚過敏,あるいは痛覚は正常かむしろ低下して現れることも多い.感覚全般に言えることであるが,痛覚に関しては情動による修飾を受けやすい.特に疼痛という言葉には,痛みという感覚の側面と付随する情動的あるいは社会的な,いわば苦悩とも言える側面がある.
リハビリテーションが関与する疼痛には,視床部の小さな病巣に起因する視床痛,末梢神経不全損傷などに併発する反射性交感神経性ジストロフィー,四肢切断後や感覚脱失肢に起こる幻肢痛など,痛覚伝導路における機能的異常が原因と考えられるものが多い.
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