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はじめに
視覚障害者の社会参加,とりわけ就労にとっては,晴眼者との情報の共有が欠かせない要件である.かつて,仕事に就くには「読み書き算盤」と言われた.しかし,全盲者であれば,墨字(点字に対して普通文字を墨字という)の読み書きは困難であったし,多くのロービジョン者にとっても,文字の読み書きには大きな制約があった.すなわち,情報のバリア,とくに文字情報のバリアが,大きな職業のバリアとなっていた.このような状況を打破する大きな力となったのがコンピュータであった.コンピュータは,めざましい技術進歩と価格低下によって,パソコンとして広く普及するに至って,視覚障害者にとって欠かせない情報機器,そして就労支援機器となった.
ワープロで作成した文書は,音声化ソフトで読み上げさせることができるようになったし,点字変換ソフトで点字に変換して点字プリンターや点字ディスプレイに出力することもできるようになった.さらに,活字データは,イメージスキャナーとOCR(optical character recognition)ソフトの活用で電子データに変換できるようになり,上記のソフトで音声化や点字化もできる.一方,文書作成については,音声化ソフトを使って,音声のガイドを受けながら一般のワープロソフトで文書作成が可能となっている.ちなみに,音声化ソフトは表計算ソフトにも対応しており,視覚障害者は「算盤」も使える.
以上は,点字使用者などの重度視覚障害者の状況であるが,ロービジョン者についても,ちょうど音声化ソフトに対応する画面拡大ソフトがある.コンピュータの画面表示を任意の倍率に拡大できるばかりでなく,ユーザーの視覚特性に合わせて,配色やコントラストも変更できる.また,コンピュータではないが,重度視覚障害者の場合のイメージスキャナーとOCRソフトによる活字データの読み取りに相当するのが,拡大読書器である.これは,ズーム機能付きビデオカメラで撮った書類や本の画像を直接テレビモニターに拡大表示する装置である.
さらに最近のIT(情報通信技術)の進展に伴い,視覚障害者は,これまで以上に多くの情報が獲得できるようになり,情報のバリアは一層軽減されている.また,ITによって,距離ないし移動のバリアも大幅に軽減され,在宅就労に代表されるテレワーキングの可能性も高まっている.
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