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はじめに
歩行再建は,対麻痺のリハビリテーションにおいても重要なテーマであり,装具療法ないし機能的電気刺激による歩行再建が報告されている.当然のことながら,馬尾損傷など末梢神経障害を伴う対麻痺の歩行再建では,機能的電気刺激を適応することはできない.
装具療法では,Reciprocating gait orthosis(RGO)が広く用いられているが,最近,内側股継手が注目されている.RGOは立位保持や歩行に歩行器を要するのに対して,内側股継手付両長下肢装具では杖なしで安定した立位を保持でき,歩行も両ロフストランド杖で可能である.しかし,従来の内側股継手(Polymedic社製Walkabout(R))1,2)は,固定された1軸であるため,その軸が股関節軸よりも下となる欠点があった.この欠点を克服するため,股関節軸とほぼ同じ高さになるように股継手よりも上に仮想軸を持つ内側股継手(立松製作所製Primewalk(R))が才藤らにより開発された3).
これらの内側股継手を用いた場合,対麻痺歩行はコンパス様となり,下肢の振り出しは左右への重心移動により行われる4,5).歩幅を,左右への重心移動の大きさ,速さ,およびタイミングで調節することは歩行訓練での大きな課題である6-8).ただし,歩幅が過度に大きくなってバランスが不安定となる症例では,股継手可動域を制限することで歩幅の調節が容易となり,歩容が安定することはしばしば経験される.しかし,内側股継手の可動域が歩容に及ぼす影響を検討した報告はみあたらない.
今回われわれは,第一腰椎破裂骨折により損傷高位が左L1,右L3である不全対麻痺患者のリハビリテーション治療を経験し,内側股継手付長下肢装具と両ロフストランド杖による歩行を試みた.そして,患者が歩行可能となった後に内側股継手の可動域を変化させて,歩行速度,ストライド,左股関節角度を測定したところ興味ある結果が得られたので,若干の考察を加えて報告する.
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