巻頭言
介護予防に,もっと力を
辻 一郎
1
1東北大学大学院医学系研究科公衆衛生学分野
pp.203
発行日 2002年3月10日
Published Date 2002/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109703
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私は,医学部卒業と同時にリハビリテーションの臨床に進んだ.しかし,学会専門医の試験準備をしていた頃,言いようのない虚しさに襲われた.たとえば高血圧などがあることを知りながら放置して,そして脳血管疾患を発症して後遺障害に苦しむ者があまりに多いという事実に対して,虚しさを感じたのである.
予防の前にはすべてが虚しく感じられた.この種の虚しさを感じてしまえば,もう臨床にはいられない.そして公衆衛生学に身を転じてから10年余が過ぎた.この間の私の研究は,リハビリテーションにおける「障害」の概念を公衆衛生における「予防」のなかで具体化することが目標であった.日本人高齢者の健康寿命を測定し,国際比較をもとに日本人の障害構造を分析した.さらに健康寿命を延ばす方策を模索しようと,高齢者に対する運動訓練の効果を無作為割付け対照試験(RCT)で実証した.世の中が介護保険で慌ただしく動くのを横目に,予防のことだけを訴えてきた.
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