巻頭言
片麻痺の新しい治療
出江 紳一
1
1東海大学医学部機能再建学系リハビリテーション学部門
pp.789
発行日 2001年9月10日
Published Date 2001/9/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109569
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脳卒中片麻痺は,早期の完全治癒例を除いて回復に限界がある.エビデンスと個々の経過から,リハビリテーション科医は予後を予測し,あるいは限界に達していると判断して患者や家族にそのことを伝える.そして現実的に妥当なゴール設定と環境整備を行う.このプロセスには致命的な欠落がある.すなわち患者や家族が障害をどのように考えているかを聴く場面がない.それがなければ患者はリハビリテーション工場から出荷される生産品として扱われるに等しい.十数年前に先輩医師が「脳卒中になった人がどう思っているのかゆっくり聴くことを研究としてやってみたい」と話していた.そのときは大切なことだろうなと漠然と思っただけであったが,ずっと気にはなっていた.その後の修練期間では,障害告知後に起こる患者の苦悩や抵抗に十分な手当てができないでいた.麻痺を治せないのだから患者自身による価値観の転換や障害への適応を待つしかない.麻痺の治療と障害体験への手当ては同根の問題であった.
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