Sweet Spot 文学に見るリハビリテーション
『源氏物語』の精神障害観―髭黒大将の妻の病い
高橋 正雄
1
1筑波大学心身障害学系
pp.278
発行日 2001年3月10日
Published Date 2001/3/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109450
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『源氏物語』(玉上琢彌訳,角川文庫)の「真木柱」には,髭黒大将の妻の精神障害とそれに対する周囲の反応が描かれていて,当時の精神障害観の一端を垣間見ることができる.
髭黒大将の北の方は,「生まれつきはごく物静かで気立てがよく,子供のようなお人なのだが,時々狂乱して,人に敬遠されるようなことが時たまおありであった」.彼女の精神状態については,「お心も狂い出して,ずっと病床に伏していらっしゃる」,「しつっこい御物の怪にとりつかれなさって,ここ数年,普通の人のようではいらっしゃらない」,「部屋などがひどく乱雑で,綺麗さもなく汚れ,とてもうっとうしくなさっていらっしゃる」,「正気をおなくしの時が多くおありで,御夫婦の仲も離れたまま長らくになる」などと記載されていて,数年来の精神障害により,日々の生活や夫婦仲にも支障を来していた様子がうかがえる.
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