附録 名作ダイジェスト
源氏物語—紫式部(日)
長谷川 泉
発行日 1951年5月15日
Published Date 1951/5/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1661906863
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源氏の母は桐壼の更衣といつた。帝の御側にいる多くの婦人達の中では君寵を一身に集めた麗人であつた。容貌才智共に人にこえる皇子源氏を生んだのち3年にして亡き人の數に入つた。父帝は源氏を皇太子にたてようとしたが正后の若宮が生れたので,臣下に列して源朝臣の姓を與えた。父帝は亡き桐壼のことが忘れられず,兵部卿の妹姫が桐壼に頗る似ているのでこれを召し出した。藤壼の女御と呼ばれるが源氏はこの繼母に怪しい戀心を感ずる。のち源氏は白熱の愛を以て藤壼に迫り,藤壼も情にほだされて否みおゝせず,源氏の不義の胤を宿すようになる。
源氏は12歳で左大臣の娘葵の上を妻にむかえた。彼女は綺麗でおとなしいが冷やかで愛嬌がないので,とかく源氏の足が遠のき,源氏16歳の頃には好色の名が事々しく噂に上るようになつた。源氏後年の戀の競爭者となつた頭中將はこの葵の上の兄であつた。
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