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実践講座 在宅医療に役立つ知識
6.摂食・嚥下障害
Swallowing Disorders.
稲田 晴生
1
Haruo Inada
1
1中伊豆リハビリテーションセンター
1Nakaizu Rehabilitation Center
キーワード:
摂食・嚥下障害
,
誤嚥
,
在宅医療
Keyword:
摂食・嚥下障害
,
誤嚥
,
在宅医療
pp.659-664
発行日 2000年7月10日
Published Date 2000/7/10
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1552109272
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はじめに
「摂食」とは,口から食物や水分を摂取する行動全体を指す.これは生命を維持するために必須であるから,本能的に継続されるよう食欲を満たす満足感などの動機づけがなされている.したがって摂食障害は,この本能を封じるような精神障害や認知障害で引き起こされやすい.一方,身体障害者の日常生活動作のなかで,食事はもっとも自立しやすい項目である.
「嚥下」は食物や水分を口腔から食道に送り込む運動を指す.ここで食物経路と呼吸経路が交叉しているという解剖学的特徴から,一旦嚥下障害が起こると誤嚥や窒息という重大なリスクを抱えることになる.また,嚥下障害があると十分な摂食・飲水量が確保できず,低栄養や脱水のリスクも伴いやすい.
食事において,この摂食全体の難易度の低さと,嚥下障害の表面から見えづらいリスクの大きさとの落差が,安易に経口摂取を進めて事故が起きる原因となっている.在宅患者において,むせているのにどんどん食べさせて肺炎を繰り返したり,逆に少しでもむせたら全面的に経口摂取を禁止して,経管栄養で管理することなどが往々にしてみられる.これは地域医療のなかで,摂食・嚥下障害の専門家が少ないことに起因している.在宅患者に接する機会の多い医療スタッフは,この分野の造詣を深めることが期待される.
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