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はじめに
近年,職業リハビリテーションの概念は確実に拡大しつつあるといえよう.これに関する議論は多いが1-7),ここでは特に次の2点からこの拡大傾向をとらえてみたい.
第1は対象者の多様化である.このことは,例えば身体障害者に設定された雇用率制度がやがて知的障害者に拡大され,さらに現在では,精神障害者などの雇用保障が切迫した問題となってきていることからもみてとれるであろう.
第2は到達ゴール,つまり労働形態の多様化である.これは対象者の多様化から当然要請されることではあるが,一方で,社会全体のライフスタイルの多様化や高齢労働者の増加により,雇用形態や就業形態が多様化してきたことがこのことに現実的条件を与えたともいえよう.具体的には,各種の特殊雇用形態8)(パート等)やテレワーク9-11)(在宅雇用等)などが論議の対象となってきている.
以上,簡単に最近の職業リハビリテーション概念の拡大をみてみたが,本稿では,さらに第3の点から職業リハビリテーションの拡大を提示してみたい.
筆者らは,総合リハビリテーションセンター職能開発係で障害者の職業的援助に従事してきたが,その過程で従来の雇用に向けた援助のみならず,雇用から福祉的就労への逆方向の援助も職業リハビリテーションの本来的なサービスとして位置づける必要があるとの結論に至った.いわば雇用への片道キップではなく,雇用と福祉的就労をつなぐ往復キップシステムの導入である.1992年頃からは,このことを「双方向の職業リハビリテーション」とか「労働市場に対する双方向機能」と呼んで,われわれの職業的援助活動の大きな特徴として位置づけるようになった.そこで本稿では,2事例を通して,この「双方向の職業リハビリテーション」という概念を提示してみたい.
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